20世紀の日本グラフィックデザイン史を振り返る展覧会「グラフィズム断章:もうひとつのデザイン史」を見てきました。
場所は東京銀座にあるクリエイションギャラリーG8。G8は面積自体は120m²と街中のギャラリーとしては特別狭いわけではないのですが、どうしても空間が分離してしまう構造になっているため開放感はあまり感じられないものの、秘密基地のような少し面白い作りになっていました。


展覧会の内容は、1953年に創刊したグラフィックデザイン誌「アイデア」を手掛かりに20世紀の日本のグラフィックデザインを総勢50名のデザイナーが再解釈し、未来のグラフィックデザインを考える場を提供することを目的としたものでした。会場を3つのエリアに分け、それぞれのエリアに目的別の展示を施していました。
入り口の先に広がるエリアは47組のデザイナーがこれからのグラフィックデザインの手掛かりになると考える本をバサッと展示(Room C)。入り口右手奥には13名のデザイナーが20世紀のイベントデザイン事例を切り絵のように壁に貼ってる展示(Room A)。その奥にはアイデアの全バックナンバーを展示(Room B)。これ、言葉にしても全然イメージ伝わりませんね。。。


流石にギャラリーを訪れている人々はデザインに対する知識も豊富なようで、展示されている分厚い本について「このシリーズは全部持っている」とか各々のデザインに対する考えをぶつけ合って議論していたりと、あちこちでハイレベルな会話が聞こえてきました。対して私はというと、デザインについて学術的に学んだことは皆無で、正直精鋭デザイナーのハイレベルな再解釈を自信が解釈することはできませんでした。
ただ、そんな私でもいいものに触れると私なりにインスピレーションを受けるものです。そこで今回は私なりの感覚で各展示ルームについての感想を記述したいと思います。
Room A : これまでのグラフィックデザインから考える13の断章
部屋の名前的にも今回の展示会のメインコンテンツなのだと思います。展示会場に入るとこの部屋の入り口は背中になるため、正直最初はこの部屋の存在自体に気がつきませんでした。ただ、ここのギャラリーは導線が1本しかなく迷うことがないのでアリなんでしょう。床におしゃれなフォントで導線を描いてあってもよかったのかな。
さて、中身ですが、このエリアには20世紀の社会的イベントのデザイン事例を各デザイナーさんが考えをまとめて壁に貼ってありました。

デザイナーさんの個性がよく出ていて、文字ベースで表現している人、スペースを綺麗にとって印刷物を並べている人、まるでライブハウスの壁のように重ねて貼っている人。色味もまちまちでした。正直なところ、文字の量があまりにも多すぎて私はほとんど文章は読んでいません。。。ごめんなさい。でも、ギャラリーを訪れている方々はじっくり目を通していました。なので、滞在時間が最も長い部屋になっていてタイミングによっては人口密度が結構高くなっていました。
文字量が多く論理的な知識は入ってこなかったのですが、同じ面積のスペースが与えられた中でデザイナーさんそれぞれ表現方法が異なっていて、とても刺激を受けました。








Room B : 『アイデア』全アーカイブズ
ここは独特な雰囲気があるエリアでした。狭い部屋に膨大なバックナンバーと椅子がおいてあり、数人の方がとても静かに本を読んでいました。
あまりにも静かすぎて写真を撮るのもためらわれ、、、アイデアさんのサイトから写真を拝借します。とにかく、とても静かでした。
Room C : 来たるべきグラフィックデザインのための図書室
このエリアは壁がガラス張りになっており、入口から全てが見える部屋になっています。Webデザインでいうところのアイキャッチの役割ですね。そのためか、離れて見ても目立つようなレイアウトになっていました。

このエリアはこんなコンセプトで設計されています。
これまでの「方法としてのグラフィックデザイン」はコンピューティングの世界に回収されてしまうようにもみえる。このなかで「グラフィックデザイン」どのようにアップデートされうるのか。それはどのようにして人間の問題として捉え直せるのか。本コーナーでは独自の活動で注目される47組のデザイナーに、各自の視点からその手がかりと考える書物5点の選出を依頼。そのうちの1冊を閲覧用として集めた全47点の書物を展示公開する。
う、うん、、、私にはよく理解できません😓
でも、さすがアイキャッチ部屋(勝手に命名)なだけあって色々な仕掛けが施されていました。
まず最初に目を引くのはポップな色が散りばめられた中央の柱。これ、もともと存在している部屋の柱の周りに今まで発行されたアイデアの本をディスプレイしてるんですね。ギャラリーとして部屋の真ん中にこんな大きな柱があるなんてどうなんだ?とも思いますが、うまくディスプレイすることでなかなかインパクトのある演出になっていました。

次に目に入るのは、白い机の上に並べられた本です。これ、一見無造作におかれているように見えるのですが、実はテーブルの上にテープでそれぞれの本の大きさに合わせた四角が描かれています。凹凸のない平面でしまう場所を表現しているんですね。今回一番感動したテクニックでした。机の上が散らかりやすい方はこの方式を取り入れて見てはいかがでしょうか。必要に応じて広く使えて、片付ける際はすぐにいつも通りのレイアウトに戻せますよ!!

全ての本には挟まれた白黒写真が顔を出しています。実は本とこのしおりのような物がこのエリアのメインコンテンツです。テーブルは4脚準備されており、テーブルの上には全部で47冊の本が配置されています。そして全ての本にグラフィックデザイナーの想いが挟まれているという仕組みなんです。多くのデザイナーさんは自身の顔写真を用いていましたが、中にはう○この絵を用いている方もいました(笑)。でも、書かれていることは奥が深く、、、これまた私には良くわかりませんでした😅
本そのものは洋書・和書が入り乱れているのですが、難しい本だけではなく表紙のデザインが目を引くものやデザインそのものを掲載しているデザインの辞書的な本など興味深いものが多かったです。さすが今活動が注目されているデザイナーが選んだ本です。




ちなみに、私個人はデザインの勉強を始めるにあたり最初に読んだ本に「まず文字をデザインしなさい」と書かれており、それ以来文字の面白さに囚われています。そんな私がこの日一番心を奪われたのはフォントをまとめたこちらの本。デジタルフォントはよく見ますが、印刷されたフォント一覧は初めて見ました。
いいなぁと思ったのですが、、モンセンはもう発行していないらしく、古書店でもなかなか手に入らないらしいです。


そして最後に目に入るのが、壁に描かれた文字です。2面にわたり文字が書き込まれており、片面は固有名詞と人名を2種類の文字の太さで書き出すことで、壁に「アイデア」という文字を浮かび上がらせています。もう片面はデザインに関する年表を壁に直接表示しています。こちらは文字の濃淡でスッキリデザインしていました。去年10周年を迎えたiPhoneの発表も載ってます。



以上、素人なりの感想を書きました。
たくさんの刺激を受けました。やっぱりセンスはいいものに触れることでしか磨くことができないと思います。これからもいいものを直接見たり触れたりする機会を逃さないよう、アンテナを常に張り続けようとあらためて思い直すいい機会になりました。
それにしても、タイポグラフィーの本欲しいなぁ。